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外国為替取引を行う場合、決済日があります。
空港や銀行の窓口で現金の両替(外貨との交換) をする場合は、当日決済(今日もの) になりますが、銀行間市場あるいは外国為替証拠金取引においては二営業日後に決済し、スポット決済(直物じきものとも呼ぶ) になります。
ちなみに、「売った、買った」とは、「ドルを売った」、「ドルを買った」ことに他なりません。
株や債券の売買なら、対象となる有価証券を「売った、買った」ですみます。
しかし、外国為替取引は対象が通貨であることが取引を複雑にしています。
というのも、ドル・円ですと、前述のように「売った、買った」の主体はドルですが、同時に円を「買った、売った」という反対の行為にもなるからです。
外国為替取引が「通貨の交換」であるということは、また、「外国為替取引が金融取引である」ということも、意味しています。
ここでいう金融取引とは「資金の調達」、「資金の運用」を指しています。
そこで、まず、「資金の調達」から見てみましょう。
外貨を調達する方法は、一般的には「借りる」ということになりますが、その場合、二つの方法があります。
一つは債券を発行する「直接金融」であり、もう一つが銀行から融資を受ける「間接金融」です。
ところが、実はこの他に外貨を調達する方法があります。
それが外国為替取引なのです。
例えば、ドルを調達するために、外国為替取引でドルを買うと仮定しましょう。
この場合、「ドルを買う」という行為が「外貨の調達」であり、対価の円を「支払う(円を売る)」ことが「運用」になります。
外貨を借りれば、返す義務が生じますが、条件が金利などで定められているため、その条件以上のコストの発生はありません。
ドルを借り入れ(調達)、ドルで運用する場合には、単純に調達コストと運用リターンだけの問題になります。
しかし、借り入れではなく「購入する」ことで外貨を調達した場合は、自国通貨(日本の場合は円)に戻す時、つまり、外貨建て投資を清算する時に、為替差損益が発生します。
これが為替リスクです。
これまで、企業は原価法をとっていたので、決済時にしか為替リスクは表面化しませんでした。
ところが、時価会計をとることになったため、円換算に基づく損益が毎期見直されることになり、為替レートが毎期、企業業績に大きく影響するようになりました。
ただ、個人投資家は、損益が確定した時のみ報告が義務付けられているので、いわゆる「塩漬け」状態で長期間保有することもできます。
つまり、直接金融や間接金融により外貨を調達する場合は、単純に調達コストに対する運用リターンを比べるだけで済みますが、外国為替取引により外貨を調達する場合は、為替リスク(為替差損益) を計算に入れる必要があり、しかも、その必要性が会計システムの変更でさらに高まったということです。
以下、例を挙げて見てみましょう。
かつて、不良債権に苦しんだ日本の銀行が、海外の格付け機関により 以下のランク付けにされたことがありました。
以下とは、「投資不適格」ということで、ユーロドル市場(外国為替のユーロ・ドルではなく、ロンドンを中心にして行われるドル短期資金取引ユーロ市場) で三カ月や六カ月物の外貨を調達することができなくなったことがありました。
そのため、邦銀は外国為替市場において円を売って、外貨を買うことで帳尻を合わせました。
外国為替の変動リスクを度外視しても外貨調達をせざるをえなかったのです。
輸出企業の代表である自動車メーカーは、主な輸出先である米国で車を販売した代金をドルで受け取ります。
その額は、トップ企業の一社だけで日本の年間貿易収支黒字相当分の約十兆円に達し、巨額なドルが毎月、コンスタントに送金されてきます。
このドルをそのまま外貨として運用する場合もありますが、多くは毎月平均された額を円に交換しています。
「一円、円安に動けば利益が百億円増える」などといった新聞記事は、このような行為から生じます。
輸出企業の場合は、外貨の調達でなく自国通貨(円) の調達のために通貨の交換(ドルから円) を行っています。
この場合、予定した為替レートに基づいて決算見通しを立てているので、それとの差額が為替差損益となります。
銀行の場合は購入した外貨自体(元本) に為替リスクが生じますが、輸出業者は恒常的なドル収入が為替リスクの対象になります。
ただ、両者とも、本社が日本にあり、日本(円) で決算する以上、為替リスクは避けて通れない道なのです。
最近、M&A (合併と買収) に関するニュースを頻繁に目にします。
大手電気メーカーが米国の会社を五十四億ドル(約六千四百億円) で買収すると報じられたことがありましたが、この場合、すべて現金で払い込むと仮定すると、前述した「直接金融」、「間接金融」、「為替取引」の三通りの方法とその組み合わせが考えられます。
ただ、いずれの方法にしろ、大手電気メーカーの帳簿上は、最終的に円で記帳されます。
全額を、直接金融、間接金融を問わず、ドルの借り入れで調達すると、資産と負債にほぼ同じ金額が立ち、為替リスクは相殺されますが、借り入れに対する利子の支払いが生じます。
一方、手持ちの円資金をドルに替えるという第三の方法「為替取引」も選択の一つになりますが、この場合は為替リスクが生じます。
このように企業の経営を左右する金融手法の選択の中に、為替リスクを伴う手段が存在していることはご理解していただけたと思います。
個人も同様で、海外旅行に行った時に現地通貨を調達した(買った) 場合、成田に着いて清算をする段階になると、円相場が外貨を買った時とは異なっていることが多く、為替リスクを経験することになります。
短期金融市場との関わり外国為替で外貨を調達するということは、実は自国通貨が資金運用の側面を持っており、金融の一手法として機能していることを意味しています。
例えば、ドル・円の取引を行ったと仮定してみましょう。
「ドルを買った」ということは「円を売った」ということになります。
そこで、外国為替取引(外貨との交換) を行った瞬間、ドルと円は各々、単独の通貨として資金取引の対象になります。
このドルを翌日まで、持ち越した(キャリーした) としますと、決済日を一日繰り延べる作業(ロールオーバー方式) により、金利が発生します。
つまり、円は日本の金利を支払い、ドルは米国の金利を受け取れます。
そこで、米国の金利が日本の金利より高ければ、ドルを持っていたほうが有利になります。
実は、筆者は「外貨を売った、買った」という表現は誤解を生むのではないか、と懸念しています。
というのも、「売った、買った」という行為にはこのような「金利」という概念が込められているとは考えにくいからです。
外貨建て債券(外国債券) の投資信託などを購入する場合、多くの人は手持ちの円資金を充当するので、円の調達金利を意識する人は少なく、多くの人は債券の運用利回りしか見ていません。
ただ、その資金が銀行の預金から引き出したものなら、その預金金利が円のコスト(調達金利) になります。
外国為替証拠金取引において、ロールオーバー方式で決済を繰り延べた場合は、短期資金金利が加わることになります。
この場合は説明書などに、「金利差がある」と最初から明示してあるので当然、理解しているでしょうが、日本の金利がゼロに近いということもあって、円のコスト意識が希薄で、無視する人が多いようです。

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